「木」と共に生きる家 2013.6

地元さいたまの西川材をつかいました。

杉のやさしい肌触りと木目を生かした住宅です。

敷地は大宮駅から2kmほどの第一種低層住居専用地域。平坦な整地で南面が道路、北面は畑に接している。東西は建売住宅が並ぶ。大宮公園一帯の景観誘導地区として風致地区に指定されているため、建ぺい率を4割に抑え、敷地面積の1割を緑地とすることとされていた。周辺にはとりどりの庭木が植えられ、遠くには指定史跡の「大和田のむくの木」や保存緑地の緑を望める。のどかな雰囲気の残る環境に対して、建物自体が4人で暮らすには少し物足りない面積になってしまう。庭をどのように配置するか、また、ゆとりある広さを感じるための仕掛けをどのようにつくるかが課題となった。

 

配置計画はいかに外部に閉じるのではなく、外部の条件を上手く取り込めるかを念頭に置いた。南側の道路は公園の散歩コースとして徒歩での往来は多いが、遮断するほどの車の交通量ではない。南側道路の向かいには1.4m幅の私道が突き当たっており、この私道の延長線上に庭をおき、庭に面して大きな窓を作れば、周囲の建物間を抜けて通る風を家の中に引き込むことができる。同時に、窓越しにふんだんな自然光と隣家のイチョウの木も借景として取り入れた。家の形状は凹凸のない正方形プランとし、なるべく北側に寄せて配置し、南側にまとまった広さの庭とアプローチ・駐車スペースを置いた。

 

 

 広さへの解決策として、1階と2階の間に中間層を設けてスキップフロアとし、床面積を補うことにした。また、空間構成を工夫した。庭に面するリビング・ダイニングをスキップ層を含んだ天井の高いメインボリュームに設定し、階段・キッチン・玄関・ワークルーム・ロフトといった天井の低いサブボリュームを可能な限りオープンにして接続させる。軸組と壁位置には丁寧な検討が必要となったが、この仕掛けにより、平面的・立体的にひとつながりの空間ができると同時に、光と風が抜けるパッシブな快適さも併せ持つ家となった。県産材の西川杉の活用を構造だけにとどめず、あらゆる仕上材として十分に活用することで、空間が小分けにされず、広がりを保ちながら統一感を持たせることができた。

さらに、建物内部の一体感にとどめないように、窓とその外の緑や空との関係性も綿密に検討することで、家に居ながらにして屋外に居るような錯覚さえ覚える。

 

杉板を外壁に使うために断熱材を厚くしたことや、窓が多いため断熱・気密の高いサッシを取り入れたことも快適さの要因ではあるが、奇を衒うことなく、日本家屋や近代建築を参考にしたクラシカルな手法を丁寧に重ね合わせることで、シンプルに居心地の良さを感じられる家に仕上がった。

主要用途 / 住宅

規模 / 木造二階建

設計期間 / 2012.1〜2013.2

工事期間 / 2013.3〜2013.6

所在地 / 埼玉県さいたま市

施工 / ゆたか建設株式会社

写真撮影 / 野田東徳


キッズハウス 2023.3

子どもたちが自分で組み立てられるダンボールの家をつくりました。

プロダクトとして販売もしています。

 

家形の骨組みだけだが、屋根をつくることで視覚的に独立した存在感を持ち、この家のスケール感が子どもの「居場所」をつくる。家具とも間仕切りとも違う。空間に馴染むのではなく、その周囲の空気をも変えてしまう。さらに施工業者が仕事として請け負って制作するのではなく、こどもたちが作り上げることに意義があり、自らが作り上げた家は、より強い存在になる。素材はダンボールだが、ジョイントパーツを開発することで手軽に繰り返し使用できるプロダクトとした。学童保育所、駅前広場、公園といったさまざまな場所で子どもの遊び空間を生み出している。

 

主要用途 / こども遊び場

規模 / 1.5㎡〜3㎡ 


引戸がつなぐ家 2021.8

築6年のマンションの部分改装です。

三姉妹のために2つの個室をまとめて広めの子ども室をつくりました。

新たに設ける扉を全て引戸とすることで、

視線の抜けと空間の繋がりが生まれました。

夫婦の寝室はあえて別々の狭小個室を残し、4LDKから3LDKへ。新たにつくった8枚の引戸。

 

カラーコーディネートは施主と何度もイメージのやりとりを重ね、最終的に決まった、ピンクベージュとペールグレーは、主張しすぎることなくじんわりと空間に馴染み、自然光の陰影にほんのりと色合いを添えている。3姉妹を育てる施主の人柄のような、優しい色合いに。

 

 各部屋に点在していた収納は廊下に引戸の壁面収納としてまとめ、家族で使えるクロゼットに。幅50cmの一枚だけ色の違う「かくしドア」は子ども室をクロゼットと繋ぎ、外部窓と洗面室を一直線に繋ぎ、リビングと子ども室と廊下を回遊的に繋ぎます。

 

 

子ども室とリビングを仕切る壁。リビング側のグレーな壁はあえて余白スペースとし、DIY用に下地を用意して住みながら作り上げていくことに。空間に広がりをだすため上部は透明アクリルに。

主要用途 / 住宅

工事種別 / 改修

設計期間 / 2021.5〜2021.7

工事期間 / 2021.7〜2021.8

所在地 / 埼玉県さいたま市

写真撮影 / 大石かおり


山法師の庭 2017.10

小さなお庭のリノベーション。

植栽を加え、さいたまの西川材でウッドデッキとフェンスを作りました。

奥行き2mの庭に、すでに植えられていた山法師をそのままに、楓と隠蓑をプラスしてフェンスとデッキを波打つように配置しました。フェンスの一部は鉢と一体になり、緑がこぼれる仕掛けに。デッキは緩やかな段状にし、時にはベンチのように座ったり、リビングから素足のまま庭に降りて家の周りを回遊できます。

 

主要用途 / 住宅

工事種別 / 改修

設計期間 / 2017.6〜2017.9

工事期間 / 2017.9〜2017.10

所在地 / 埼玉県蕨市

施工 / ゆたか建設株式会社 

植栽 / ニワシゴト

写真撮影 / 大石かおり一級建築士事務所


プロジェクト

オフィス、ショップ、温浴施設など様々な規模の企画・設計に携わってきました。